2017年1月13日金曜日

ベルリン天使の詩 実はこれもカシエルが主人公だった?

なんだか随分怠慢こいてしまいましたが、本年もよろしくお願いいたします。


お正月が明けて1/7-1/13の一週間だけ、ヴィム・ヴェンダース特集のように早稲田松竹が「ベルリン天使の詩」と「パリ、テキサス」を2本立てで上映してくれてます。

ええ、もちろん観に行きましたとも!そして本日ベルリン天使の詩だけ、野暮用で会社を休むことになったので、もう一回観に行きました。(早稲田松竹はレディースディやっていないのですね)

私、この映画はヴェンダース監督が私のために作ってくれたのではと観るたびに思ってしまいます。私モノクロ大好きです。そしてこの80年代のベルリンと音楽。吸血鬼ならぬとも孤独に永遠の時をさまよい続ける霊(天使たち)…あり得ないほどドストライクにツボです。

聴感覚優位人間の私にはブルーノ・ガンツのAls das Kind das kind war と始まるペーター・ハントケの詩の音にうっとり。ブルーノ・ガンツもいい声しています。エレニの帰郷見た時も思ったけど。

余談ですが、今回パリ、テキサスも○十年ぶりに再見、主人公トラヴィスの声にも聴き惚れました。ヴェンダース監督、声で俳優選んでたりする?

そして私は静かに人々を見続けていたカシエルが大好きでした。演じていたのは故オットー・ザンダー。



この映画を観た後、この方の出演作品いくつか漁ってみました。

ほとんどが口髭のあるおじさんでした。「ドイツの恋」とか、なんと全編フランス語でしゃべってました。

ブリキの太鼓にも出ていたようですが、思い出せません。もう一回見なきゃね。でもあの愛読書だったブリキの太鼓に出ていたなんて因縁を感じてしまいます。




このシーン↓なんて涙が出そうなほど好きです。だって、だって、御髪ふさふさの教祖様(ニック・ケイヴ)に衝撃の初来日コンサート時と変わらぬブリクサ(左後ろ、あの頃はステージ衣装がいっつもこれ)、そしてカシエルです。このあと、From Her to Eternityが演奏されます。


昔VHSも持っていましたが、数年前BDも購入。VHSの時は確か本編のみでしたが、BDは未公開映像も含め盛りだくさんの特典付き♥

ヴェンダース監督のコメンタリーまでもあるものの、そこまでまだ手を出せてなかったのですが・・・どうやら、コメンタリーにはコロンボ、ピーター・フォークも参加してる様子。それって凄すぎる。ちゃんと見なきゃだわ。

実はこの映画、今や主要キャストがブルーノ・ガンツ以外皆鬼籍に入っています。そりゃ荒野の七人のように50年以上前の映画ならそれも納得ですが、まだやっと30年ほどの映画なのにですよ。

天使ダミエルが惚れるブランコ乗りを演じていたゾルヴェイク・ドマルタン、当時の監督の恋人ですが、彼女は40代半ばで急逝。そもそも90歳近かったクルト・ボワはもちろん、ピーター・フォークも、オットー・ザンダーも亡くなりました。そしてこの映画で象徴的だったベルリンの壁は映画が出てから2年ほどで崩壊しました。

もう、歴史の様相ですね。どうとらえていいのやら当惑してしまいます。

ブルーノ・ガンツの声も好きですが、私はずっとカシエルが好きでした。本編でのカシエルは淡々としていました。相方ダミエルが熱いのに比べて、クールな印象です。見た目も大きな黒い瞳、南方系を思わせるダミエルに比べると色が薄く、冷淡な感じにも見えます。

カシエルは飛び降り自殺をしようとしている男に寄り添うのですが・・・男は飛び降りてしまいます。

その瞬間、Nein!と叫んだカシエル。

カシエルは男を死なせたくなかったのです。

(どーでもいい話ですが、この自殺男のセリフの字幕が意味逆になっているのに今回気づきました。自殺男は飛ぶ前にさぁ、飛ぶぞとWarum nicht?(なぜいけない?)と言っていたのに、字幕は「でもなぜ」となってました。この自殺男はなぜ自分が死なないといけないのかと思っていたわけではなく、生きる意味など全く見失い、死なない理由がなかったのです。) 英語字幕付きの動画見っけ。でもこっちもWhyだけになってますね。

その後カシエルも同じようにもっと高い銅像のてっぺんから落下してみます。走馬灯のように、カシエルがずっと見続けてきた人々の悲しい歴史が蘇ります。戦争に空襲。

このシーンにカシエルの隠れたやさしさ、暖かさを垣間見たようで、そしてただただ、人々の辛い歴史を傍観するしかないカシエルの寂しさ、哀しさが凝縮されているようで、とてもカシエルが好きになったのです。そして、カシエルはそのまま、霊としての生をあるがままを受け入れ、ストイックに永遠に孤独に歴史を見守り続けるのかと思っていました。

なので数年後に続編、Far Away, So Close(時の翼をこえて)が出たとき、カシエルが突然人間になる…というさわりだけで、断固拒否してしまいました。 霊として孤独に、無力感に苛まされても、静かに人々を見続けるカシエルが好きだったのです。

当時、在英中でしたが、その時の評判はケチョンケチョンだったと記憶しています。Sight & Soundなんかでもこき下ろされていました。なので余計に・・・観ませんでした。ナスターシャ・キンスキーが出ていようが、拒否してしまいました。でも、今Imdbの評価を見るとそんな低くもないのです。

そしてBDの特典でヴェンダース監督、信じられないことに、公開当時の本編からは想像もつかないことを話しています。実は人間になりたくてなりたくてしょうがなかったのはカシエルだった。そしてカシエルもダミエルに続いて人間になって終わるはずで撮影までしてあったのを、結局天使のままにしておいたのだと。

確かに・・・カットされた未公開シーンを見ると、カシエルはひょうきんもの。見えないのをいいことに、パントマイムよろしく、ヒトの物まねしまくり、写真の中にはちゃっかり入る(どうせ映らないので)
件の自殺男が飛んだあと、男を止められなかったことに憤っているカシエル。えらい熱いヤツなのです。

意外過ぎました。 私は静かに哀しみを秘めたカシエルが好きだったので。

そして何より、実はコンサートホールで人間になって鎧を床に置き、愛を語り合うマリオンとダミエルのお邪魔虫を堂々とやっちゃうカシエル。

さらっさらの長い金髪をかきあげるカシエルがとっても素敵なのです。

これを観た瞬間、食わず嫌いのように20年も続編を徹底的にスルーし続けた自分を呪いました。ただ、やっぱり、いろんなところで見聞きするあらすじ・・・ではあまり興味はそそられないのですが、このさらさら髪のオットー・ザンダーはとっても素敵!

とご本人が亡くなってから痛切に観たいみたいと願っちゃうところがほんとバカバカバカ!と壁に頭くらい打ち付けたいくらいの気分に。

今回、このヴェンダース監督の話を念頭に置いて本編を見ると…実は主役はダミエルじゃなくってカシエルだったの?と思えてきました。つまり、霊として生きてきた歴史の語り部はすべてカシエル。ダミエルは恋に目がくらんでマリオンしか見てません。そして、何を語るわけでもないのに、カシエルの表情だけ映しているシーン、ダミエルがマリオンを見つめているシーンよりも多いのです。

そしてちゃんと伏線は張られていたことにも気づきました。 元天使だったピーター・フォーク。(この設定もとっても粋だと思いません?) 

適当に「見えないけどいるのはわかっている」と怪しいオッサンよろしくぶつぶつ言ってるだけかと思ってたのですが、ちゃんとダミエルに話しかけ、カシエルに話しかけ、そして、人間になったダミエルに、「もっと背が高いかと思っていた」ってカシエルと混同してるんじゃん!

ニック・ケイヴのライヴの最中に壁に頭をつけているカシエル。このシーンがカシエルが人間になりたいと願い、迷い、苦悩している姿なのだと理解しました。

未公開シーンには監督自身が「なんでこれを省いたかみんな納得するだろう?映画監督ってバカなことするんだよ」というそのシーンは確かに入れられんわな…という不可解なもの。これがエンディングではそれまでの美しい映画がぶっ潰されてしまいます。

でも、「天使が人間に恋をして人になるまで・・・」の話を「ふたりの天使が人間になるまで」の話にしてもオッケーだったような気がします。そんな数年後の壁が崩れてから突然カシエル人間になるくらいなら。

カシエルとダミエルの双方が人間になっての再会だって面白いです。それまで無かった体があり、お互いペタペタ面白そうに触っている姿はかわいい。

地上に水が流れ始める前から霊として存在していた二人。自分たちに似た姿の人間が登場し、言葉を話したのでマネして会話をすることを覚えた二人。ずっとそばにいたダミエルが人間になり、自分がいることさえ、気づかせられない状況にカシエルが即、後を追っても不思議はありません。(だって元の話はそうだった)

だってやっぱりみんな一人ぼっちではいれません。ポーの一族、吸血鬼エドガーはメリーベルを仲間に入れ、そのことに苦しみながらもメリーベルが死んだら代替のようにアランを身内にしてしまう。アランが死んだら自分も生き続けることを拒否、火に撒かれて死んじゃいます。

ハンガーのミリアムだって、永遠の命はあるけども、数百年ごとに新たな愛人を身内にして次の数百年をともにし続けていました。

霊だって一人ではいれないのです。

そして再会してお互いをペタペタ触り合う元天使二人(マリオンはヨコに置き)はまるで、美女よりもイリヤを優先してかまっていたソロさん・・・のナポソロコンビもちょっと思いだしました。

続編スルーし続けた私ってほんとバカ!今見たいと思っても、レンタルもない、BDはリージョン2オンリー。理解できる字幕付きDVDをゲットできるのかイマイチ怪しい状況。反省することしきりです。

おまけに教祖様ったら続編にもちゃんと曲書いてたのね。カシエルの歌なんてある・・・・



うーーん、これならFrom Her to Eternity, the Carnyの方が絶対好きではあるけども・・・
これからアマゾン総ざらいでFar Away So Close観てやるわ!



























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