2011年10月14日金曜日

Elektrokohle  ノイバウテン 80年代最後のライヴ

anbb 来日に伴い、ブリクサ(Blixa Bargeld)  とノイバウテン(Einstuerzende Neubauten)が懐かしくって、
買い漁ってしまったDVD。  何しろ私がノイバウテン大好きだった少女時代(80年代)はネットも
Youtubeもなければ、手軽にビデオ入手なんてできなかった! 今はいいよね ♪


Elektrokohle(Von Wegen) は2009年Uli M Schueppel 制作。 
ここから20年さかのぼった1989年12月21日にノイバウテンは初めて、旧東ドイツでのライヴを行うことになる。 
そのひと月程前に壁が崩れたとはいえ、ドイツ統一はその翌年。 まだ国境があった時代だ。
メンバーはパスポートを持ち、あらかじめ取得したビザを手に東ドイツへと入国する。 
それ以前にも東でコンサートを…という話はあっても、極右やナチ扱いされたり、いろいろと政治的理由をつけられ、
実現しなかった。 彼らの旧東ドイツでの初めてのライヴに向かう珍道中を織り交ぜながら、
かつてライヴに来た観客(旧東独人)に、20年前、そして今を語らせるドキュメンタリーである。

Elektrokohleは彼らがこの旧東独初のコンサートを行った場所の名前である。
そしてクリスマス直前に行われた、この旧東独での初のライヴは、ノイバウテンの80年代最後のライヴなのだ。 
東には存在しないことにされていた、ノイバウテンの初ライヴに来た旧東独ファンに、20年後経って
当時のことを語らせるというアイデアは面白い。 仏大統領ミッテラン(当時)が東独訪問中でいきなり
謁見することになったり、その後の世の中の流れが示唆されているような珍道中。 
東独の劇作家ハイナー・ミュラーの挨拶は 「今日はスターリンの誕生日」で始まる。 
・・・ さすが、昔の東の御国だ。

DVD構成は本体ドキュメンタリー映画(英仏字幕選択できる)、オマケとして、その89年12月21日に行われた2回の
東独公演ビデオ、ノイバウテンメンバーを含む関係者への回顧インタビュー(2009)である。

この東独公演ライヴ映像が素晴らしいのだ。 昔からのノイバウテンファンなら垂涎モノだと思う。
いや、素晴らしいといってもただのVHSビデオで撮られたものなので、画質、音質とも正直良くない。 
ただ、初来日コンサートに行ったような80年代のノイバウテンファンなら、きっと涙する。 ひたすらカッコいい!

まさにこれこそ、『私の愛したノイバウテン』なのである。 

演奏は2回とも、Feurioに始まりYue-Gung と、Kollapsから、Haus der Luegeまで80年代のアルバムに
入っている曲のうちの12-15曲だ。ただのVHSビデオなので、楽屋から入場していくメンバーを追い、
そのまま舞台左側から撮ったものが大半。 これが面白い。 じっくりと誰が何を演奏しているのかが見える。 
そして彼らの迫力は半端じゃない。 観客の熱狂も。 (西も東も人間は一緒だったんだね。)

2009年の回顧インタビューでアレックス(Alexander Hacke)が、2回のコンサートは通しで全力投球で演奏する
ことになり、「若かったからできた」と話す。 初めての東独での演奏にかなり気合が入っているのは確かだ。 
会場では今は無き、スタージ(旧東独公安)が監視しているのも、凄い。

舞台設備はチャチである。 照明もただの白ライト。 演出なんてしゃれた構成もなく、彼ら自身と持ち込んだ楽器、
限られた機材のみ。

でも 私が見た数ある、彼らのライヴ映像の中でこれが一番良い。 気合いも迫力も違う。 ただただカッコいいのだ。
そして彼らはなんと一致団結しているのだろう。 

今世紀になってから見かける手サイン(バンドのコミュニケーションらしい)など、一切ないのに、ぴったり息があってる!
ライヴが真髄、本領発揮するバンドである。 とはいえ、彼らの思い入れの違いなのか。 
2回目の来日公演(大阪)演目と曲は被っているが、かなり迫力が違う。

彼らはみなそれぞれがなんでも屋である。 曲がかわれば、手持ちの楽器(またはガラクタ)を替え、なんでも演る。 
こういうプリミティヴさも私はとても好き。

2回ともLetztes Biestが始まるとき、アレックスが舞台後ろヘ行き、ギターの代わりにケミカル容器らしい、
青いポリドラムを持って戻ってくる。 この曲では彼はムフティ(FM Einheit)と一緒にポリドラムを叩くのだ。 
一回目の時はムフティと並んで座り、ブリクサの右手側にいたが、2回目は、ひとりブリクサの左手側にタンクを置き、
恐ろしく長い脚を折りたたんで正座した。 音調整のためか、彼はまるでそのままひれ伏すかのように体を前に伏せ、
ドラムに触れている。 

身長196cmの彼の、折りたたまれた脚が、胴よりもはるかに長いのにも驚くが、ポリドラムの前に
ひれ伏しているアレックスはまるで祈りでも捧げているかのよう。 
ソフトめのブリクサの声が響く、静かなメロディとともに、この祈りの姿はなんとも感動的ですらある。

そして、Ein Stuhl in der Hoelleをこんなに素晴らしいと思ったのも初めてである。
ここでは機材も人手も足りないのか、パーカッションリズムの部分を勢ぞろいで床を踏み鳴らすのだ。 
他のライヴ映像もいくつか見てるが、のちに見られる打ちならし班らしいのが仰々しい、太い棒を床に
打ちつけているものよりずっと ド迫力なのである。 またCD等のレコーディング分とは比べ物にならない程、
心を打つ音なのだ。

ノイバウテン誕生20周年記念で2000年に作られたドキュメンタリー、Seele Brenntは「リッスン・ウィズ・ペイン」と
いう名称で日本語字幕付きのものが出ているようだ。 
だけどこの2009年制作のDVDは、Youtubeで多少切れ端は見れるが、日本仕様版はなさそう。 
比較的日本でそのまま見れるUS版もないようで、Youtubeコメント欄に見れないと嘆くUSファンの書込みがあった。

でもこのライヴ映像はぜひ通しで見ることをお薦めする。

80年代のノイバウテンファンの方なら、この76分の、彼らの80年代最後でありながら、初の東独ライヴは
DVD購入してでも観る価値大アリである。 残念ながら、アマゾンJPでは出てこないので、
英アマか独アマで買うしかないけど、頑張ってみる(?)価値はあると思う。

リージョンフリーと言いつつ、PAL方式なので日本の既存プレーヤーでは怪しい。(我が家は結局マルチで再生) 
それでも少なくともN〇C等、純国産でない限り、PCでは見れるはずである。(責任は持てないけど)

正直、これのためにマルチプレーヤー買っても、いいのでは思うくらいのお薦め度である。
間違いなくノイバウテン、べストライヴ映像である。



ブリクサ+ノイバウテン関連記事はこちら Einstuerzende Neubauten

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