2011年7月4日月曜日

人の心にもっとフォーカスして欲しい、Waking the Dead

トレバー・イーヴ(Trevor Eve)主演のWaking the Dead。
過去の迷宮入り未解決事件を現代の最新科学捜査技術を駆使して、主人公ボイドと部下の優秀なクルーが解決する話。

結構プロットが凝っていて面白い。 
なのに毎回、犯人確定するや否や、終了。クレジットとテーマ曲があわただしく流れ、そのあとはAXNミステリーのCM。 

うるっとしかけても、ぶち壊しなのだ。 これ、何とかならないのかしら?
残りかけた余韻が残らないのよ~。十二分に余韻が残せそうな深く重い話が多いのに。 

基本的には犯人探しがテーマの警察ものなので、二転三転の末に犯人が判ればOKなのかなぁ。

中には数十年の怨念の果て・・・の様な話もある。
こういった犯人やその周りの人の心にもっとフォーカスしてもいいのではと思ってしまう。
いや、正直言って、フォーカスして欲しい。その方がもっと面白いし感動できると思う。 
犯人探しで終了してしまうのが、肩透かしを食らったような感じでもったいない気がする。 
いつも焦点あててもよさそうな社会問題やテーマが潜んでいるのに、犯人探しだけで終わってしまうなんて勿体ないです。

先週のは9インチの大釘で頭をぶち抜かれて死んだ老人の殺人事件の捜査から始まる話。 
同じ手口の殺人事件が戦後と数十年前にもあり、どちらも未解決事件であったことから、彼らが担当。
先の二人の被害者は戦時中、軍の同僚だった。 宗教団体に所属していた3人目は軍歴なし。

前編で「大釘で頭を突き破られるなんて何かの罰ではないか。被害者は罰を受けるにふさわしいことをやったのではないか」という推測するボイド。

とりあえず、最初の二人の接点である、過去の軍人及びその家族子孫をあたることにする。

何しろ戦時中の話だ。生き残りで、存命中の人間を探すのも難しい。
殺された老人の発見者である老人が捜査を気にして何かと、訪ねてくるが、忙しいボイドは適当にあしらっている。

聞き込みの結果、改名していた元兵士を老人ホームで見つけ、話を聞くもその直後にこの老人も大釘を打たれて殺害。 
ここで大釘殺人の被害者は4人。

廃墟となってる兵舎に残されたポスターに、5人の兵士の名前が書かれている。そのうちの3人は大釘で殺されていた。 同じ部隊の生き残りで、今は兵隊グッズのトイショップを経営している老人によるとその5人は残虐非道な極悪人だったが、恐ろしすぎて誰も彼らの蛮行を止められなかったとのことであった。

鑑識のフランキーが超優秀。機転が利き、ちょっとした試料も見逃さずにゲット。
殺人現場にのこのこ入ってきた男のDNAもちゃっかり頂き、身元も突き止めてしまう。 
過去の殺人現場にも足を運び、大釘は同じ製造ロットであり、殺人現場には共通のDNAが残され、半世紀以上にまたがる大釘殺人の犯人は同一と突き止める。 また、今回最初の殺人事件で軍とは無関係と思われた老人も実は改名した、 
5大極悪人の一人だったのだ。 つまりあと一人は残っているのだ。

そんな折、ショップ経営の老人の孫より、メルに手紙が渡される。投函するように頼まれたメルあての手紙。
内容はなんと、この老人も戦時中に戦死した別の兵隊の名前をかたって生きてきており、実は5人目の極悪人だったのだ。
彼は自分の蛮行を悔い詫び、事件の背景を告白する。

5人の兵士は商船海軍の夫の帰りを待っているオードリー・クレイトンという女性を兵舎で集団レイプした。 
しかも、彼女に好意を寄せる牧師を殴り、押さえつけて、現場を見せつけたのだ。
オードリーは妊娠、男子を生むが息子が4歳の時に子供を目の当たりにするのに耐えきれず自殺。

この息子が殺人現場にのこのこと入り込んできたニール・クレイトンであり、彼は彼なりの復讐として、かつて母をレイプした男の娘を誘惑して弄んで捨てた。

大釘殺人は彼らの蛮行の罪への処刑であり、次は自分の番だと老人は手紙を残したのだった。

その間にフランキーの鑑識は着々と進み、DNA鑑定の結果、ニール・クレイトンは殺された極悪元兵士たちでなく、
大釘殺人犯の息子であることが判明。

最後の処刑の場は兵舎ではないかとの推理のもとに、ボイドは兵舎に向かう。そこにはトイショップの老人と、何かと話をきいてもらいたがっていた、殺人現場発見者の老人がいた。 この老人が実は元牧師であった。 また処刑の現場に逃亡したニールもいた。

二人の老人の表情はすがすがしい。為すべきことを為すものと罪を償う覚悟を決め処刑を待つ者。どちらも迷いは全くない。悲惨な数十年前の出来事を微塵も想像させない二人の老人の淡々とした様子。(淡々としているだけに裏にある苦しみ、悲しみは想像を絶するのだけど)

ボイドが叫ぶ。「オードリーが復讐を望んだと思うのか。そいつを殺して何が変わるのだ」「ニールはお前の息子だ。」と。
陳腐だけど、それくらいしか言いようがないよね、この状況で止めようと思ったら。

尊敬する元牧師が父だと知ったニールは「もうやめてくれ」という。(動揺して?)

元牧師は一度大釘を取り落すが、ニールに向かって「違う」と言って結局、金づちを老人の頭に振り下ろす。

そしてクレジットとエンディング、そのままCMへ。 

・・・・・大いに不満だ。

この話は何と残酷に哀しい人々を登場させているのだろう。 そしてなぞ解きには優秀なボイドが傲慢に見える。 
人の話をきちんと聞かんかい! 最初っから、この哀しい犯人はずっとアンタに救いを求めてきていたではないか! 
ちょっとは反省しろよ! バカバカッ!

話の構成が良くできていてとても面白いのに、犯人探しのなぞ解きだけで終わるのが不満なのだ。

このエピは特にそうだ。 愛する人を目の前で暴行されずたずたにされても、荒くれ者たちの前になす術のなかった牧師。 
彼の無力感、自責の念、愛する人が自殺した後、彼女への償いの復讐に燃える執念はとても切ない。
老人となった犯人が、淡々としているだけに余計に哀しい。

そして母に愛されることなく、目前で母に首を吊られる、4歳の子供。彼は自分の出生を呪ったことだろう。
父親はレイプ犯の5人のうちの誰かと言うことしかわからない。 人間なら自分の出自は気になるはず。 
彼は母のために、自分の人生を棒に振って、復讐を成し遂げてきた牧師を尊敬してきた。

戦後半世紀以上がたち、科学技術の進歩によって、実はその尊敬する牧師が父だと判明。彼は嬉しかっただろう。きっと心の奥ではずっと求めていた父親なのだ。

だけど牧師は認めるわけにはいかない。(最も思ってもみなかった驚愕の事実だっただろうが) 
オードリーはそもそも人妻であったし、彼は牧師である。不義密通なのだ。 
または、息子に殺人犯が父親だと思わせたくなかったからなのか。

半世紀以上もの間、そうと知らずに個別に、母を、愛する人を殺された恨みと暗い情念を燃やしてきた二人。 彼らの人生は彼らが事実を知りえたら違ったかもしれないのに。 オードリーも自殺しなかったかもしれない。 とても哀しい。

トイショップの老人だとてそうだ。きっと自分が嫌いだったから、他人の名をかたって生きてきた。
幸せな家族に恵まれ、罪人にはふさわしくない、不相応な人生を歩んだ。
自分の蛮行の罪の意識にも苦しんだのだろう。 処刑でやっと解放されるのだ。

復讐を成し遂げた元牧師はどうするのだろう。 親子と判明した二人はどうなるのか??
事件の謎解きだけじゃなく、この悲しい人々にももっとフォーカスしてほしい。

このシリーズのエピは前後編2話完結でなく、3話完結にするか、TV映画としてじっくり作った方が、もっともっといい話になるような気がする。

今のままでも十分に面白いけどさ。

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