2011年5月22日日曜日

死刑制度のない国でのキルオーダー  刑事ジョン・ルーサー(Luther)最終話を見て。

イギリスのTVドラマでも狙撃班出動はよく見られる。
私がイギリスにいた頃(92-95年)、狙撃班は特殊部隊、しかも頻繁に出動するのは比較的新しい活動であった。

また一般のおまわりさん(私服の警察も含む)は拳銃を所持していなかった。 日本と違って。
90年代のドラマ、心理探偵フィッツなどを見てもこれは明らかである。拳銃を持った犯人が出ると即、特殊狙撃班。メインキャストたちは取り巻いて見ているだけである。

冷戦が終わり、90年代に入って、ベルリンの壁がなくなり、東側のマフィアが入り込みやすくなり、拳銃での犯罪が劇的に増えたらしい。 当時日曜の新聞(日本と逆で平日の新聞の3倍はぶ厚い)で慣れない狙撃班出動時のまぬけ話がちょこちょこ掲載されていた記憶がある。その当時は狙撃班に犯人が射殺された…などと言う事件はほとんどなかった。

はるか昔、家に帰ってテレビをつけたら、心理探偵フィッツがやっていた。NHK BSだったと思う。 すでに最後の10-15分くらいだったので、全体の話は見えなかったけど、拳銃を手に人質を取っている犯人(と言っても15-16歳くらいの子供に見えた)が、しっかりと体の真ん中に2発撃ち込まれて、射殺された時のショックは忘れられない。 それも半分説得されかけているタイミングで・・・・。
狙撃班の失敗話の一頁か…と、やり切れない怒りを感じたものだ。 早まったスナイパーのチョンボなのだとばかり思っていた。

その後もイギリスドラマでスナイパーが出てくるたびに思った。(と言ってもドラマの展開を盛り上げるには持って来いなので当然なのだけど) なぜ、犯人を射殺してしまうのか? 
威嚇射撃じゃないのか? 手足を狙って捕獲じゃダメなの?
殺さなくったっていいじゃない!と思うようなことが多かったからだ。

そこでルーサーの最終話である。(ちょっと前のことだが、下書き途中で放置してたのよ、これ)

ルーサーは同僚にはめられ、殺人犯扱いされてる。 同僚の企みで呼び出されるルーサー逮捕のために狙撃班も出される。そこで取沙汰されているのは「キル・オーダー(kill order)」。 今まで'kill order' という、言葉を認識した記憶はない。 'Get him(大抵男なので)’と司令官が発せば数発撃ちこまれ射殺と言う展開のものばかりだ。

ルーサー自身、彼らは自分の心臓を狙っていると言うくらいだから、『狙撃犯出動=射殺措置』なんだろうな。 

これではっきりした。 けど、非常に居心地が悪い。悪すぎる・・・。

死刑制度は(おそらく人道的理由で?)廃止されているのに、一警官(まぁ、偉い人なんだろうが)の判断で人の命を奪ってええんかい!ということである。 

例えば、アメリカが国を挙げて、ビン・ラディンを殺害したって、あそこはそういう国だと思っているので、またかよ~、くらいにしか思わない。 中東で万引きをした旅行者が腕を切り落とされても、とても気の毒には思うが、そういうお国だし…なのだ。

だけどさ~、欧州連合なんて、死刑制度の有無を近代化、民主化のバロメーターの一つに入れているくせに、一警官がキル・オーダーをイチ個人の一存で出せるなんて、あり得ない気がする。 ものすごい違和感だ。

これぞ、ダブルスタンダード・・・で済ませていいのか!

何年か前にテロ容疑者と思われた男が警官にロンドン地下鉄で射殺されたことがあったなぁ。 射殺された人は本当にテロリストだったんだっけ? 射殺されたら、死人に口なし状態である。

動物愛護団体が死人を出すほど気合いの入ったデモをやったりするけど、キル・オーダーに異論を唱える人はいるのだろうか?

帰国してから、すでに15年以上。 浦島太郎となった私はTVドラマを根拠に思いを馳せるのみだ。

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